平成22年度特定疾患医療従事者研修会 講義要約
保健師研修および難病相談・支援センター職員研修で行われた講義の要約です。
=保健師研修 |
=難病相談・支援センター職員研修 |
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保健師研修
保健所が中核となる難病等療養者支援の地域ネットワーク事業 |
島根県浜田保健所 永江 尚美 |
島根県における難病対策(難病療養者支援)は、1976年に実施した全県下の保健所保健師による特定疾患医療受給者交付者への家庭訪問による悉皆調査に始まる。その後地域保健法施行に伴い、1998年4月から各保健所に難病担当係を設置し、保健所における難病対策を強化してきた。特に、保健所が中心となり在宅療養支援体制のネットワークを構築し、患者および家族のQOLの維持・向上を基軸においた支援は、地域の中で難病療養者が安心して暮らせる体制支援の強化につながった。
この背景には、保健所における日常活動を通して「状況把握(課題発見)→援助(援助・資源開発)→教育的働きかけ(資源向上)→実施→ネットワーク化(関係者・地域・圏域)→評価・施策」というPDCAプロセスに沿った活動展開と、保健所及び保健所保健師の役割機能を確認しながら、関係者をつなぎ・動かすことを大切にしてきた活動展開がある。
難病の保健活動 実践報告と討論 実践報告A |
兵庫県東播磨県民局加古川健康福祉事務所 吉野 由実子 |
兵庫県加古川保健所は兵庫県の南部に位置し2市2町(人口約43万人)を管轄しています。兵庫県では平成16年10月の台風の水害で、在宅難病患者が長時間の停電により人工呼吸器が停止する寸前になったり道路冠水により緊急搬送が出来なかったことを受け、災害時の課題を明らかにし「在宅人工呼吸器装着難病患者災害時支援指針」を作成、各保健所において「個別災害対応マニュアル」を作成する取り組みを始めました。
平常時に災害をイメージして支援策を具体化させ、療養状況の変更にもタイムリーに対応するために、患者家族とともに支援体制を共有しておくことは重要です。当所では、患者家族及び行政(市防災担当部署・保健福祉部署)、医療機関、訪問看護等に加え、地域の自主防災組織の参画を得て、支援体制の共有を目的に年1回「難病在宅療養支援推進会議」を開催、また年1回「個別ケースカンファレンス」を開催し、個々の災害時の具体的な支援体制の充実に取り組んでいます。
神経難病療養者の療養経過と保健師による療養支援の焦点 |
東京都立神経病院地域療養支援室 高橋 香織 |
神経難病は病状が進行していくため、療養の経過に合わせた支援が必要になります。診断・告知をされた時、医療処置の検討・導入の時期、ターミナル期など時期により課題や起こりやすい問題がありますが、全経過で大切な点としては「家族支援」と「関係者の連携」が挙げられます。
神経難病は、長期の療養生活となる場合が多いため、介護者の疲労が蓄積してきたり、病気になられたり、加齢により介護力が低下したりする場合もあります。また家族内の他の問題などが出てくることもあります。療養者だけではなく、家族全体をみて、支援体制の調整やレスパイト入院の検討などの家族支援することは保健師の大切な役割です。
また、多数の関係者が関わることが多いため、日頃から情報共有が行え、課題や問題が出てきた時には、療養者を含め関係者で検討ができるような「関係者の連携」が重要です。医療職同士の連携はもちろんですが、福祉職との連携も重要です。このような連携が円滑に取れるようサポートしていく必要があります。
難病相談・支援センター職員研修
山形県における神経難病の取り組み:無床診療所との連携 |
山形大学医学部第三内科 加藤 丈夫 |
重症神経難病患者の在宅診療を円滑に進めるためには、地域の基幹病院と無床診療所の連携・協力が不可欠である。しかし、重症神経難病患者の在宅診療を担当できる無床診療所の数は、これまで十分といえる状況ではなかった。その理由を明らかにするため、平成17年に県内の484診療所にアンケート調査を行った。その結果、「神経難病に関する知識・技術が不十分である」ことが理由の一つであることがわかった。そこで、平成20〜21年に県内の3地区(村山、庄内、置賜地区)で「神経難病に関する講習会」(教育講演と実習)を開催した。講習会は地区医師会、山形県医師会、山形大学医学部第三内科、山形県保健薬務課及び厚労省研究班との共催で行った。3回の講習会に参加した医師は63人、看護師・コメディカルは230人であった。平成17年の調査では、重症神経難病患者の在宅診療を行うことができ、且つ公表してもよいと文書で承諾した無床診療所の数は33診療所であったが、平成21年には70診療所と倍増した。これに基づき、ホームページ「山形県難病医療ネットワーク」を作成し、県内の神経難病拠点病院・協力病院と共に、重症神経難病患者の在宅診療が可能な県内各地区の診療所をインターネットで公表した。これにより、医療従事者・患者・家族が、神経難病患者の居住地区から在宅診療を担当できる無床診療所を探すことが容易になった。神経難病患者に対する本県でのこのような取組は全国的にも最も進んでおり、「山形方式」の導入を検討している県も少なくない。
難病による職業生活上の困難の実際と支援の可能性 |
障害者職業総合センター 研究員 春名 由一郎 |
難病の多くが医学の進歩により慢性疾患となり、服薬や自己管理、定期的受診を続けることで、難病とともに生活を送る人が増加している。難病のある人たちの就労課題は、職場や地域での誤解や偏見、支援やサービスの情報不足、担当者間の意思疎通の不足等の積み重ねによって、医療や生活の問題との悪循環ともなり、生活・人生の破綻にまで至る可能性がある。就労可能性は病気や個人の状況だけではなく、具体的な仕事内容や職場での配慮の見通しを考慮する必要があるため、ハローワークと保健医療機関の協力関係が重要になる。また、難病のある人には、医療、生活、就労の問題が複雑に関係していることが多いため、各専門機関が連携して「餅は餅屋」で医療、生活、就労、心理面等を総合的に支えることが、結果的に就労支援の成功につながる。就職活動や就職後で孤立しやすい本人を支えるツールや、ハローワーク等との連携を進めるためのツールについても紹介した。
富山県難病相談・支援センターにおける就労支援の実際 |
富山県難病相談・支援センター 相談支援員 井澤 朋子 |
難病の知識を持つ唯一の就労支援機関として他機関との連携を強化し、下記のような就労支援を行っている。
① 求職者紹介カードの作成:ハローワークとの連携を強化するために職歴、病状、希望職種等を記載した求職者紹介カード作成しハローワークに提出、ハローワークから結果報告を貰っている。
② 病状にあった適職のアドバイス
③ 求人情報の連絡:ハローワークから送付される求人情報を常に点検し、相談者に連絡
④ 障害者合同面接会や福祉職場面接会に同行:当センターで作成した疾病別のチラシ(病気の概要と事業主のQ&Aを掲載)を参考に、病気について説明。
⑤ 合同相談会およびミニ相談会の開催:就職が決まらない人を対象に就職できた人の体験報告と就労支援機関からのアドバイス及び個別相談会を実施。
⑥ 就職できた人のフォローアップ:職場訪問し病状観察、職場との調整 など
これら、きめ細かな就労支援の結果、35名の相談者のうち16名(45.7%)が仕事に就く事ができた。今後も他機関の協力を得ながら相談者の思いに添えるよう努力していきたい。
三重県における神経難病の取り組み -神経難病とコミュニケーション支援- |
三重大学基礎看護学(神経内科医) 成田 有吾 |
三重県は紀伊半島の東側に位置し、人口は北に多く南に少ない(半島部では過疎高齢化)。神経難病への取り組みは1980年代に国立療養所、県保健所の神経難病支援に始まり、1990年、三重大に神経内科が新設され、葛原茂樹教授の着任によりALS、PDはじめ神経変性疾患の臨床と病理の研究が本格化した。1995年からは三重県の神経難病多発地域を回って療養者の声を聞いた。難病対応を先進地に学ぶため、福岡県重症神経難病ネットワーク等を見学、準備を進め、2003年に三重県難病医療連絡協議会が発足した。同年、三重大医学部附属病院に医療福祉支援センター(MCNC)も設置された。難病医療専門員1名が確保され、MCNCに席を確保し他のスタッフと多職種連携、相互補完しながら活動している。専門員は、疾患と療養者を知り、コミュニケーション支援や県単独事業の発案や維持にも努め、研究会等での日常業務からの発信を目指している。
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