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平成19年度特定疾患医療従事者研修会 講義要約
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| 東京都難病相談支援センター | 笠井 秀子 |
東京都難病相談・支援センターには沢山の療養相談が寄せられており、相談者、相談内容、相談対象疾患などは非常に多種多様である。今回、東京都難病相談・支援センターに寄せられたよくあるであろう難病に関する相談事例を3例選択し、保健所保健師および難病相談支援センターにおいて療養相談に従事する職員が合同で選択事例について相談内容からアセスメントをおこない、対応策について検討していただいた。事例検討の目的は、(1)保健所保健師および難病相談・支援員相互の役割を理解し、今後の連携に役立てる。(2)アセスメント方法を学び課題の抽出と整理の仕方、対応策、残された課題、関係機関との連携についてを学ぶ機会とする。である。特に難病相談・支援センターにおける相談従事者は、医療職、福祉職、心理職、ピア(患者・家族)などさまざまな職種が配置されている。このような背景から相談内容に誰も彼もが同じように対応ができるわけではないが、たらいまわしにならないように、相談の窓口として適切な対応をしていかねばならない。今回は、そのためのステップとして活用していただければと思う。
事例について1例目は診断された直後であり入院中のギランバレー症候群患者さんの専門医療機関の紹介についての相談事例。アセスメントのポイントはギランバレー症候群について配布資料からその疾患の特徴を把握していただき、急性期の専門医療が適切に確保されているか否かが課題であることをおさえていただくことである。2例目は、相談ニーズを満たすためには、ALSの病状が球症状の進行により、呼吸障害および嚥下障害がかなり進行しており、命にかかわる状態であることがアセスメントできることである。従って、人工呼吸器装着状態を視野に入れ、また誤嚥性肺炎や呼吸不全による緊急時を含めた地域の支援体制の整備と病状に即した提供する必要性のあるケアのプログラムを提示できることが重要である。しかし、相談対応者として自分の能力を超える相談であれば、地域の保健所保健師に早急につなげる必要がある事例であることが理解できることである。3例目は、SLEの療養者の就労相談である。就労相談は就労の斡旋機関ではないため、療養者が経済的自立をめざすための支援として、以下の整理が必要であると思われる。まずは本人の就労についての考え方(病気の表明、勤務形態、勤務条件、就労内容など)、病状と就労との関係(主治医の意見、病状評価、病状のコントロール・管理など)、さまざまな関係制度、地域における就労に関する社会資源などについて情報収集し、整理していくことから支援をはじめたいと考えている。
| 高齢・障害者雇用支援機構上席研究員 | 春名 由一郎 |
難病のある人の就業支援とは、疾患管理と職業生活の両立の応援に他ならない。難病の多くが慢性疾患となっていることから、そのようなニーズが高まっているが、縦割りの専門機関や制度では十分に対応できていない。今年発表された「難病のある人の雇用管理・就業支援ガイドライン」では、職場と地域における適切な配慮や支援の実施により、現状の多くの職業上の課題が解決できる見通しが示されている。難病のある人たちの就業可能性は先入観で過小評価されがちであり、一人ひとりについて、本人や関係者の職業生活と疾患管理の両立のイメージを構築していくことが必要である。病気の診断直後から労働と保健医療福祉分野が連携し、ガイドラインを活用して関係者がブレインストーミングすることを勧めたい。さらに就職時や就職後も、難病のある人が継続的に相談できる場として、本人と地域を支える「触媒」として難病相談・支援センターの機能は重要である。
| 熊本労働局職業安定部職業対策課 障害者雇用担当官 |
田島 浄嗣 |
ハローワークでは、就労を希望される方、仕事を探されている方の職業相談、職業の紹介などを行っているが、障害のある方については、就労での配慮や課題もあることから専門の相談窓口で対応している。障害のある方への就労支援では、身体障害、知的障害、精神障害の、いわゆる障害者手帳を持っている方が多く、支援制度(各種助成金制度や障害者の法定雇用率制度など)も整備されているが、障害者手帳を持っていない難病のある求職者についても、当然に職業相談、求人の開拓、事業主への働きかけ、職業紹介、就職後の職場定着などを行うものである。
しかし、障害者手帳がないことや難病の理解が十分ではないことなどから、利用者側に「ハローワークでは難病患者の相談はしていない」という誤解が生じていた。
熊本県では、平成17年6月に「熊本県難病相談・支援センター」が設置され、難病のある方からの就労相談が寄せられていたものの、当初はハローワークを含め就労支援を行う関係機関との連携は取れていなかった。平成18年秋、難病相談・支援センター、熊本県担当課からの相談をきっかけに、ハローワークとの連携が始まり、「熊本県難病患者就労支ネットワーク会議」の設置、「難病患者の就労を考えるシンポジウム」の開催、ハローワークなどでの就労相談をしやすくするためのツールとしての「難病者就労相談シート」の作成、活用などの取り組みに繋がっている。
| 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 佐賀障害者職業センター |
崎原 妙子 |
難病を持つ方への就労支援は、障害者手帳を持っている方は障害者の支援ルートにのってきたが、手帳を持たない方に対して十分な対応ができておらず、また、在職中で職場適応に困難を抱えている方の支援ニーズは就労支援者側にほとんど届いていない現状がある。難病相談・支援センターに対し、障害者の就労支援機関や制度についての情報を届けることは大事なことであり、互いに連携しながら支援していく必要がある。
難病者の就労支援のポイントとしては、(1)適切なアセスメントとジョブマッチング、(2)企業とのコミュニケーションの仲立ち、(3)医療、保健、福祉機関と連携した生活全般を支える総合的な支援の実施があげられる。これらの支援をしていくためには、ジョブコーチ支援を有効に活用していくことが考えられる。
難病者の就労支援における課題 には、手帳を持っている難病者への支援を充実すること、手帳を持たない難病者に対し「その他の障害者」として支援できることを周知徹底し、丁寧な支援を行うこと、在職している難病者への職場適応支援を実施すること、難病者の支援をめぐって関係機関との連携体制をつくっていくことがあげられる。
| NPO日本炎症性腸疾患協会理事長 | 福島 恒男 |
消化管で特定疾患として認定されているのは潰瘍性大腸炎とクローン病の2つです。 前者は大腸に限局して直腸から全周性、連続性に発生する、粘膜層の炎症で、後者は主として小腸、大腸、肛門に発生し、非連続性で、炎症は腸管の全層に及ぶのが特徴です。 両者ともに原因不明で、若年層に多く、活動期と緩解期を繰り返し、活動期では生活に与える影響は大きく、患者数は前者が8万人以上、後者が2万以上です。 前者の活動期は程度によって重症、中等症、軽症に区別され、重症では入院治療が必要であり、副腎皮質ホルモン、5-アミノサルチル酸製剤、免疫抑制剤、白血球除去療法など行われ、改善しなければ手術が行われています。後者の活動期は活動指数によって程度が評価され、栄養療法、同じ薬物療法が行われています。最近、抗TNF-alpha製剤の有効性が示されています。 腸管の問題だけでなく、精神的な障害、食事を含めた生活制限があるので、これらを十分に理解して、支援していく必要があります。
| 国立精神神経センター武蔵病院 副院長 | 久野 貞子 |
昭和47年に厚生労働省(旧厚生省)によって定められた難病対策要綱による神経系の特定疾患(いわゆる神経難病)は、パーキンソン病(推定患者数:約15万人)からハンチントン病(推定患者数:約600名)まで異なった有病率の疾患群である。本日は、受講者が最もよく遭遇されるパーキンソン病および関連神経変性疾患について述べる。パーキンソン病関連疾患は、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症の3疾患からなっている。いずれもパーキンソン症状を主たる運動症状とすることは同じであるが、初期は鑑別が困難なことが多い。しかし、数年後には後者の2疾患は脳画像検査やL-dopaなどパーキンソン病の特効薬に対する反応性から鑑別が可能となる。このことは過去30数年間にパーキンソン病の病態、発症機序、治療法が著しく進歩したのに対し、後2者の頻度はパーキンソン病の数%と患者数も少なく、研究が遅れて治療法が未開発なことも関係している。
| 国立国際医療センター 膠原病科 | 三森 明夫 |
『リウマチ性疾患』とは:外傷性を除いた「筋と関節の痛みを生じる疾患」の総称であり、関節滑膜、関節包、靱帯、腱と付着部、軟骨、骨端に生じる。おもに炎症(免疫)反応すなわち浸潤した白血球の活動による。原因は、感染症(一般細菌、結核、ウイルス)、加齢現象(変形性関節症/下記)、代謝産物の析出(青壮年者の痛風、高齢者の偽痛風)と分かっているものが多いが、その他は「原因不明の免疫疾患」であり、この中に、本日の主題である「関節リウマチと膠原病」が含まれる。
「変形性関節症」は頻度が高く、関節リウマチと混同されることもあるので、略述する:「加齢による軟骨変性」と「荷重」に炎症も関与する。腫れないことが多く、骨X線上の「骨棘」形成によって診断は容易なのだが、患者が関節リウマチと誤解していることは少なくない。混同したまま、適切な医療(鎮痛薬と筋力維持のリハビリ、膝疼痛が著しければ人工関節置換術)を受けていない寝たきりの人もいる。
「若年性関節リウマチ」:小児に生じ、3型に分けられる。単関節型は自然終息しやすく予後がよい。「多関節型」は、成人の関節リウマチとよく似ており、関節変形による機能障害が深刻な問題になる。成長障害もみられることは、小児特有の問題である。成長障害はまた、治療のためのステロイド薬を大量に用いた場合にもおきる。「全身型」は、熱性疾患としての名称「Still病」と同義で、関節変形は少ない。
「関節リウマチ」:
日本で患者は50万人以上。軽症から重症まで程度は様々である。原因不明の自己免疫による「関節滑膜炎」であり、リンパ球が滑膜細胞を増殖させ、この反応に伴って破骨細胞が刺激され骨を壊す。刺激は「炎症性サイトカイン」による。「可動関節」および「頚椎」が障害される。腱鞘炎もおきるが、「胸椎と腰椎は侵されない」(関節リウマチ患者の腰痛は、無理な姿勢による二次的なもの、または骨粗鬆による圧迫骨折などによる。一方、若年性関節リウマチは脊椎全般を侵すことがある)。
治療の現状と問題点:リンパ球の活性化と炎症性サイトカイン(とくにTNF)を抑える薬が開発されて普及し、1990年代から治療法が大いに進歩した。したがって関節リウマチは、かつてのような身体障害に至る疾患ではなくなりつつある。少量の「メトトレキサート、MTXと略」(大量に使えば抗癌剤)の毎週・間欠内服が、標準的な治療薬である。また炎症サイトカインを抑える薬は現在、化学合成物でなく生物がつくる蛋白質を利用して作られているので「生物製剤」と呼ばれ、注射剤である。
MTXは、病初期から使用すれば6〜7割の患者を非常に改善させられる薬だが、100〜200人に1人の割でアレルギー性肺炎(熱・咳の持続)がおきる。この症状をみたら内服中止、および入院治療が必要である。また風邪その他で体調不良・節食/飲水不良の日に内服すると、または腎機能の低下した人が飲むと、薬剤が体内に蓄積して骨髄障害(白血球減少)をおこすことがある。副作用と対策を知っていれば危険は少ないが、これらの理由からリウマチ専門医以外の医師が、MTX処方に消極的になりがちな現状がある。専門家の所在は、リウマチ学会専門医またはリウマチ財団登録医の語句でインターネット検索することができる。
MTXでもなお治療困難な関節リウマチは、かつてなら身体障害に至る可能性が高かったが、現在は生物製剤によって改善可能である。ただし生物製剤には、高価(かつ現行市販薬は外国製)という大きな問題がある。軽症例にも広範囲に使用して関節リウマチを征圧しようと唱道される一方で、MTXまでの範囲で治療効果・経済効率を最大化する考えも出始めている。前述のように、標準MTX治療の普及すらまだ不均一であるから、一般医による治療の実態と一部の専門医の積極的な治療には、大きな違いが生じており、関節リウマチ治療の標準化への方向性は流動的といえる。なお患者への医療費の減免措置には様々なものがあるので、リウマチ診療を行なう病院では、生物製剤の支払い額について個々人の相談に対応が必要となっている。
「関節リウマチ以外の膠原病」も様々な程度に関節痛を伴うので、リウマチ性疾患に含められているが、これらは内臓障害に注目すべき疾患群である(括弧は日本の患者数):SLE(5万人)、筋炎(1万人以上)、強皮症(1万人以上)、血管炎のひとつである結節性多発動脈炎および顕微鏡的多発動脈炎(1万人以下)などがある。これらに伴う関節炎は、関節リウマチと違って、一過性、非破壊性である。
『膠原病』とは:
19世紀以後に知られるようになった疾患群であり、関節痛は伴うものの、本質は内臓、血管、または筋の病態である。
「全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)」はループス疹(ループス=狼、に噛まれた傷)という紅斑(erythema)によって皮膚疾患とされ、後に内臓障害主体の全身性(systemic)疾患と変更された。腎障害、中枢神経障害が高率に生じることが分かったからである。患者によっては肺、腸、膀胱、網膜にも炎症をおこす。このような多彩さは、この疾患の炎症が臓器特異的でなく血管一般の「表面または周囲」でおきることによる。
「血管炎」は、19世紀以来記載されてきた諸疾患の総称(まれなものから幼児に多い川崎病まで合計すると10数万人)である。血管の壁内に白血球が浸潤して炎症をおこし、その部分の血流障害(組織の壊死、臓器の機能、障害神経分布によっては痛みや痺れ)が疾患となって現れる。「結節性多発動脈炎」は稀だが、全身の臓器障害をおこす、重症かつ代表的な血管炎である。
「強皮症」は、皮膚、肺、消化管に過剰なコラーゲンが溜まる(この状態を線維化という)疾患であり、これらの組織が硬くなる。肺活量は減り、消化管蠕動運動は低下する。「多発性筋炎」は、筋にリンパ球が浸潤して筋細胞を壊し、脱力を生じる。「皮膚筋炎」では、皮膚にもリンパ球が浸潤し特有の皮疹を伴う。強皮症と筋炎は、「間質性肺炎」が高率に伴い、呼吸不全による死亡がありうる。
膠原病の概念は、病理学上の観察による。膠原(コラーゲン)は線維状蛋白で、結合組織の主成分である。結合組織は、皮膚、血管壁、各内臓の細胞周囲、骨、軟骨、腱、筋膜に存在する。クレンペラーら(1942)は“ SLEと強皮症では、諸臓器の結合組織にみつかる変性が、病態の本質を反映するのであろう”と述べ、膠原の変性に注目した。この変性は病気の原因でないと分かったので、膠原病という名は適切ではないが、今でも使われる。「膠原病」に属する疾患は、SLE、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合結合組織病、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎である。これらには内臓障害があり、治療が類似し、相互の重複がある。「混合結合組織病」という疾患は、軽度のSLE、強皮症、多発性筋炎のうち2つ以上を合わせ持ち、抗RNP抗体という特殊な抗核抗体が出現するものをいう。関節リウマチは膠原病の定義に合うが、関節が病変の主坐であることが、ほかの膠原病と異なり、治療方針は全く違う。
広い意味ではベーチェット病、血管炎一般、およびシェーグレン症候群(唾液腺と涙腺にリンパ球が浸潤し、分泌不良になる疾患)も含まれる。この中で、シェーグレン症候群に必要な対策は、うがい・歯磨き・点眼のみであることが殆どであり、重症病態は一部の患者にのみおきるので、膠原病の名で一括することには問題がある。
膠原病にみられる免疫性障害
※自己抗体 → SLE の白血球減少、溶血、血小板減少
※免疫複合体 → SLEで血流低下、 血管炎で閉塞・臓器の壊死をおこす
※自己反応性 T リンパ球 → 多発性筋炎での筋破壊、関節リウマチでの炎症持続
SLEの内蔵障害の主体は、脳と神経の虚血、腎の血管障害である。
血管炎では、免疫複合体性の炎症が血管の壁内でおきるので、閉塞による臓器破壊がおきる。侵される血管の分布によって様々な疾患が区別される:高安動脈炎は、大動脈とその太い枝が侵され、大動脈弁閉鎖不全と心不全、脈の消失、網膜虚血、腎血管性高血圧をおこす。川崎病(乳幼児に特有)は冠状動脈を侵し、心筋梗塞や動脈瘤がおきる。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病は、腸粘膜の血管炎(下血と腹痛)、腎障害(蛋白尿)、下肢の皮膚血管炎(紫斑)を生じる。結節性多発動脈炎は、全身の血管炎であり、古典的結節性多発動脈炎(腎血管性高血圧、指趾の壊死・皮膚潰瘍、脳硬塞、心筋梗塞、消化管虚血壊死)と顕微鏡的多発血管炎(腎不全、肺出血、間質性肺炎、脳硬塞、末梢神経障害)に分けられる(括弧内の区分は絶対的でない)。
血管炎は、SLE、関節リウマチの部分症状としておきることもある。
腎臓はほとんど血管でできている内臓であり、SLEのループス腎炎、血管炎の腎障害、強皮症の強皮症腎がおきる場となる。肺も膠原病に共通する炎症の場であり、間質性肺炎がよくみられる。
強皮症、混合結合組織病、SLEには、レイノー症状(おもに手の小動脈が寒冷刺激で一過性に収縮)が、しばしばおきる。膠原病一般に血管の異常反応を伴うことの現れだが、原因はよく分かっていない。血管異常が、肺動脈におきた場合、肺高血圧症を示して心臓に負荷がかかり心不全となる。
強皮症は、成因不明の血管障害が、線維芽細胞の活性化をもたらし線維成分であるコラーゲンの過剰な蓄積(皮膚、肺、消化管の硬化)をおこす。指趾尖端の血流障害も著しい。ときに腎の血管が閉塞し、急性腎不全+悪性高血圧(強皮症腎)をおこす。
ベーチェット病は、病態不明(おそらく血管主体)の疾患である:皮膚、粘膜(眼のぶどう膜、口腔粘膜、腸の粘膜)、中枢神経血管に炎症をおこす。
『膠原病の治療薬』
特効薬は、ステロイドホルモン(グルココルチコイド)である。副腎皮質から分泌されるステロイド分子を修飾して人工合成したものが“ステロイド薬”と呼ばれ、白血球の過剰な自己免疫反応を抑える治療に使われる。体内で分泌される量(生理的量)よりはるかに多い量を初めに投与し(初期量)、漸減して、生理的量に近い少量(維持量)を継続し再燃を防ぐ。自己免疫疾患とは、おもに一群のリンパ球と単球系の相互作用が、未知の刺激により増幅されて内臓障害をおこすものである。これらの病原的な白血球は、癌細胞と違って無制限な増殖はしないので、上記のようなステロイド治療計画で“鎮静”させられるのである。鎮静は治癒といえず、再燃することがある。
しかし、この治療は病原的でない白血球反応も抑えてしまうので、大量投与中は「感染症」を発症し易くなる。また様々な余分な代謝作用も伴うので、食欲亢進、不眠、「中心性肥満、糖尿病、骨粗鬆症、白内障、緑内障などの副作用」がおきる。
関節リウマチに対しては、ステロイド薬は炎症を緩和するが、軽快させる作用はない。理由はおそらく、白血球反応だけでなく滑膜細胞の増殖反応が加わっているためであるが、前述の「MTXとサイトカインの遮断薬(生物製剤)が非常に有効」である。
強皮症にはステロイド薬がほとんど効かない。前述した線維芽細胞の活性化が抑えられず、有効な治療薬がないのであるが、病状の進行は自然にとまることが多い。
SLEの一部と、結節性多発動脈炎の多くでは、ステロイド薬で効果不十分なときに免疫抑制薬であるシクロフォスファミド(抗癌剤でもある)が使われる。SLEにはまた、タクロリムス(免疫抑制薬だが抗癌剤ではない)が使われることがある。しかしいずれも単独では不十分で、ステロイド薬と併用される。
ベーチェット病では、ステロイド薬が眼症状の治療に使われる一方、不適切な使い方で悪化することもある。また内科と眼科が密接に連携する必要がある。
<疫学>
疾患の性差:関節リウマチ、SLE、強皮症は、女性が8割以上を占める。高安動脈炎、混合結合組織病では、9割以上が女性である。シェーグレン症候群は女性に多い。
発症年令:関節リウマチは、30〜40才台の発症が多いが、(多関節型の若年性関節リウマチを関節リウマチに含めれば)小児から高齢までありうる。高安動脈炎とSLEは、若年〜中年(とくに妊娠可能年令)に多いが、やはり小児にもおきる。川崎病は、乳幼児に限られる。側頭動脈炎は、高齢者に限られる。結節性多発動脈炎(古典的結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎)は、中高年に多い。
治療薬と年齢について:小児ではステロイド薬による成長抑制、妊娠可能女性では、シクロフォスファミドによる卵巣機能不全(永久不妊になることがある)、関節リウマチ治療薬MTXは、胎児催奇性があるので、妊娠の可能性があるときは使えない。
<リウマチ膠原病の症状>
共通するもの:発熱と関節痛は、高頻度にみられる。ただし熱は、強皮症には普通みられず、関節リウマチでは微熱がときどき伴う程度のことが多い。関節痛は、関節リウマチで腫脹が持続性・多発対称性、ほかの膠原病では変動制・一過性である。
レイノー症状は、験常人、職業病(冷凍、振動)にもみられるが、抗核抗体陽性なら膠原病の前駆症状の可能性があり、強皮症と混合結合組織病に高率、関節リウマチにはみられない。
皮疹は、SLE、皮膚筋炎、Still病に特徴的なものがあり、血管炎が皮膚を侵すときに紫斑、網状皮斑としてみられる。
間質性肺炎は、関節リウマチを含むどの膠原病にもみられる。急性なら治療しないと呼吸不全になる。慢性のものは肺線維症と呼ばれ、有効な治療薬がなく肺活量が低下する。
肺高血圧症は、ステロイド薬が効く場合と効かない場合があり、効かないとき心不全で致命的となる:混合結合組織病の数%に生じ死因となる。強皮症とSLEにもおきることがある。
<疾患に特徴的な症状>
SLE:関節炎、皮疹(紅斑、円板状皮疹)、日光過敏(紫外線に当たると皮疹、熱が出ること;日焼けのことではない)、腎障害(=ループス腎炎;排泄機能低下または尿蛋白;重度の場合それぞれ腎不全またはネフローゼ)、中枢神経障害(痙攣または精神症状)、血小板減少(紫斑、出血)、溶血性貧血、胸膜炎、心外膜炎、腸炎(=ループス腸炎;下痢、下血、イレウス)、網膜炎(視力障害)。
強皮症:指趾末端から始まる皮膚硬化が特徴。肺線維症が高率。消化管の蠕動低下による、逆流性食道炎(胸焼け)、便秘も多い。末梢の血流不全が一部の患者で重大な問題になる。数%に腎内部の血管閉塞で腎不全(強皮症腎)をおこす。しかし、大多数の強皮症患者は軽症である。
多発性筋炎:左右対称、近位筋の脱力を生じる(立ち上がり困難、物を持つと重く感じる)。嚥下筋も侵され誤嚥・窒息の危険もある。青年〜高齢者にみられる(一方、小児の脱力では多発性筋炎でなく、筋ジストロフィーまたは皮膚筋炎を考える)。皮疹(上眼瞼・肘・膝の紅斑、手背=ゴットロン疹)を伴えば、皮膚筋炎であり、小児にもおきる。成人の筋炎は間質性肺炎を高率に伴い、成人の皮膚筋炎では癌が基礎にありうる。
血管炎症候群:侵される血管分布によって多彩である。大血管から微小血管の順に;高安動脈炎(脈の消失、心不全)、側頭動脈炎(こめかみの痛み、失明の危険)、川崎病(心筋梗塞、冠状動脈瘤)、結節性多発動脈炎(腎障害を含む全身臓器の障害)、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病(紫斑、関節痛、腹痛、下血、蛋白尿)。
ベーチェット病:眼のぶどう膜炎(虹彩炎、脈絡膜/網膜炎)、口内アフタ(浅い潰瘍)、陰部潰瘍(陰嚢、尿道周囲など)、皮膚病変(毛のう炎様、アクネ様、結節性紅斑、血栓性静脈炎)、関節炎、大血管の血栓症・動脈瘤、消化管(おもに腸)潰瘍、中枢神経障害。
<日常生活における注意点>
膠原病という言葉で一括して、不必要な心配をするのは適切でない。個々の患者に対応する際は、まず疾患名を明確にし上述のことを参考にして、どの問題に注意すべきかを区別する必要がある。SLEと皮膚筋炎では、紫外線に当たりすぎないよう注意すべきことがあるが、過剰な心配(屋内引きこもりなど)は不適当である。
食習慣は、不規則・低栄養が健康に悪いという常識的なことを別として、リウマチ膠原病に影響はない。特別な食事療法も存在しない。“免疫力を高める食品”というのは、その作用がもし本当なら、膠原病には害になる可能性がある。膠原病は自己免疫の過剰による疾患であり、これを“低下”させるのが治療の方向だからである。
治療のためのステロイド薬は、食欲亢進による肥満(ステロイド自体は体重を増加させないので、増加したら過食のせいである)、中心性肥満(脂肪分布が変化するのみで体重は増えない;ステロイド減量とともに消失する)、糖尿病、高脂血症を招くことを知る必要がある。
妊娠で悪化する膠原病は、SLEのみである。しかしSLEが治療で安定していれば、妊娠・出産は十分可能である。一方、様々な膠原病で心臓障害がおきることがあり、心不全があれば、一般的に妊娠・出産は困難である。
膠原病(自己免疫疾患)の病勢は、一般に加齢とともに低下する。すなわち年令とともに悪化していくというイメージとは逆に、病気は自然に消えていくのである。高齢者におきやすい膠原病は、側頭動脈炎と顕微鏡的多発血管炎のみである。
| 埼玉医科大学神経内科 | 小森 哲夫 |
まず、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸不全は、呼吸筋麻痺による2型呼吸不全であり、低酸素血症(pO2<60 Torr)と高二酸化炭素血症(pCO2>45 Torr)を示すこと、慢性呼吸不全は、その状態が6ヶ月以上継続することで診断されることを概説した。次に、これらの評価法としての血液ガス分析と酸素飽和度検査について述べた。これらの知識を元に、ALSの呼吸障害への対処法として非侵襲陽圧呼吸療法(NPPV)が呼吸筋の休息に有用であることや導入時の注意点・維持する場合の評価法・維持困難時の対処法について医学的側面から解説した。呼吸理学療法について、内容の紹介と吸気筋力維持への効果について示した。後半には、嚥下障害の神経機構を説明の後、経皮内視鏡的胃瘻造設について解説した。最後に、理解を深めるために、ALSで呼吸障害・嚥下障害を呈し、経時的に評価・対処した具体例を複数提示した。
| 青森県立保健大学 | 川村 佐和子 |
近年進行している保健医療福祉制度の改革にそって、難病保健活動が変容していく課題について、保健師の立場から検討した。
1)難病療養者の居住場所について:入院期間の短縮化により、在宅化が促進している。
2)在宅療養者に対する医行為の実施者について:たんの吸引を家族以外の者に一定の条件下で当面3年間容認された。平成18年度の3年経過後の実態調査では家族以外の者に依頼している人は全体では36.5%であり、「容認条件」を満たす者は14.7%であった。侵襲的人工呼吸器装着ALS療養者については、家族以外の者に依頼している人は全体では45.8%(平成15年度調査では31.9%)であり、「容認条件」を満たす者は15.7%であった。
3)保健師の医行為実施について:保健師助産師看護師法の改正により、保健師免許交付は看護師国家試験合格者のみに限定されることになり、保健師は医行為を保助看法の下で実施できることとなっている。
以上のことから、保健師は地域ケアシステムの構成員として、在宅療養者に対する医行為が安全に提供されるよう調整していく役割がある。
| 北海道紋別保健所 | 佐藤 祥子 |
北海道の北東部に位置し愛知県とほぼ同じ面積に8万あまりが暮らす紋別保健所管内は、常勤の専門医がいない、地域資源が乏しい地域であるが、保健師は遠方に住む主治医や地域支援者達とはメールも活用し支援を行っている。今研修会では『限られた資源の中でも夢をかなえる』支援の実際を報告した。人工呼吸器を装着し4年経過した60代男性のALS患者さんは体調不良と介護負担を気にして自分の存在価値に否定的で閉鎖的な生活をしていた。支援の方向性を『新たな自己役割を見つける』として、本人にしかできない役割(療養体験を伝える事で支援者を育てる、患者の立場でサービス等の情報提供)遂行の機会をつくると、他人に役立っていると自分の存在価値を再認識し、外との接点を嫌がらなくなった。その結果、本人の強い意志で装着後初めて長距離長時間の外出を成功させたり、ホームヘルプサービスも受け入れ、『家族以外の者による痰の吸引をしてほしい』との意思表示にもつながり、QOLが向上した。初めての外出は事故がなく患者さんや家族は大満足であったが、安全安楽の提供においては緊急時の医療体制整備、看護者の同伴等課題が残った。
| 岡山県備前県民健康福祉部岡山保健所 | 森 貴美 |
平成16年度から平成18年度の3年間、本庁にて難病業務に従事した。その中で、平成17年度特定疾患医療従事者研修会に県保健所難病業務担当保健師を1名派遣、その後、派遣保健師と相談のうえ復命会を実施した。
復命会の内容は、(1)概要説明、(2)ALS事例のアセスメント、(3)演習:難病の地区診断〜管轄地域におけるALS療養者の身体状況と医療サービスの確保状況〜で構成した。演習は事前記入とし、中核市保健所も含め全県下で実施した。
復命会を通して、全県下、保健所単位及び各保健師の課題が明らかとなり、演習実施により、県下のALS療養者の実態と医療サービスの地域格差等の課題も明らかとなった。
本庁担当者として明らかになった課題への対応としては、(1)保健師資質の向上−保健師研修会の開催,難病患者等在宅療養支援マニュアルの作成、(2)専門医の確保−神経難病ネットワーク研修会にてALS療養者の実態とサービスの地域格差について話題提供,保健所実施の個別・集団活動への専門医の協力体制強化、(3)他機関連携等−ケアマネージャー研修会開催,訪問看護師等研修会開催,県内の保健医療福祉関係者が集う学会で全県下で実施した演習の内容を分析し発表、(4)予算確保−医療サービスの地域格差等を根拠に前年度増予算の確保、であった。
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